今月のコラム 文⁄塾長 大山重憲
炎
クレメント・ストーンは子供の頃、シカゴの歩道で新聞売りをしていた。その後、次々と大きな目標を達成し、保険業界で大成功を収め屈指の大富豪になった。全米各地に3000を越す図書館を寄贈し、長年にわたる慈善事業や人道援助活動などが評価され、1981年にノーベル平和賞にノミネートされた。
彼は、ノートルダム大学で神学の教授をしているジョン・オブライアン神父を自宅に招いて議論を交わした。
「神父、事業に無くてはならないのは熱意ですね。」
「確かにそうです。ビジネスマンに限らず人間として成功するにはまず何よりも熱意が必要だと思います。 大賛成です。」
「神父にとって熱意とは何ですか。」
「熱意(Enthusiasm)という言葉は広く使われていますね。その語源は二つのギリシャ語から成り立っています。最初の言葉Thoseは神を意味しています。もう一つはEn-Tae。つまり、古代ギリシャ人は文字通り人の中にいる神という意味でこの言葉を使っていました。地上のあらゆる真・善・美の創造主であり源である神、その神が、ビジョンを持ち熱意に燃え夢を実現する意思の強固な人間の心の中に宿っていると考えられていたのです。つまり、神は人の中に存在し、熱意の炎をかきたてているのです。熱意がなければ戦いに勝つことはできません。」
どうしたら熱意をかき立てることができるのだろうか。クレメント・ストーンの教えはこうだ。
成功するか否かは、否定的なエネルギーを打ち消し、肯定的な姿勢を身につけるためにどれだけの精神力を注ぐかが大切です。そして毎日欠かさず自分の目標を心にとどめることです。自分にとって目標に価値があればあるほど熱意も高まります。
あなたが何千人もの聴衆の前で慣れないスピーチをしなければならないとしましょう。緊張しますね。不安に駆られるでしょう。そんな時、こんな言葉を思い出してください。「成功はチャレンジする人にのみ訪れる」「チャレンジすることで失うものは何もない。そして成功すれば得るものは計り知れない」。そして自分にこう言うのです。「今すぐ行動しよう!」
演壇の上に立って怖くて足がすくんでしまったら、次のような言葉で自分を励ましましょう。自分に気合いをかけるのです。「重要な言葉は大声で強調しよう。句読点があるところは一呼吸置いて間を持とう。力強い声ではっきりと話そう。笑顔を絶やさず、メリハリのある口調で発表しよう。」
そして、みぞおちのあたりのざわざわが収まったらしめたものです。いつもと変わらぬ情熱で話をすることができるようになります。このテクニックは100%の確率でうまくいきます。
ウィリアム・ジェームス(哲学者)教授は普遍的な真実を指摘しています。「行動には必ず気持ちや感情やムードが伴う。もし熱意を持ちたければ、熱意を持って行動するのだ。そうすれば熱意が湧いてくる」と。
途中で放棄する人を定義するように言われたら「すぐに諦めてしまう人」と答えるだろう。どんな逆境に遭っても頑張り、明らかな敗北を勝利に変える人もいる。勇気、つまり努力する力。たたきのめされたリングの床から立ち上がる力、完成するまでやり遂げる力は生まれつきの性質なのだろうか。そうではないはずだ。
では、頑張る人とやめてしまう人の大きな違いは何だろう。それは「熱意」である。どんなことでもそれに対する熱意を失ったとたん、努力する気持ちもなくなってしまう。人は敗れた時に終わるのではない。あきらめた時にすべてが終わるのだ。
些細な事柄はいくら放棄しても大した問題ではないだろう。しかし、自分の人生を好転させるのに必要な努力を続けるための熱意を失ってしまったら…。
心の中で燃え盛る大望の炎を燃やし続ける方法を、体恤しなければばらない。