今月のコラム 文⁄塾長 大山重憲
成功の秘儀
「人間の現在ある姿とは、その人がかつて自分について考えていたことの具現化されたものである。」過去、幾多の賢人・哲人がこの意味の言葉を述べています。
アメリカの哲学者エマーソンも、ローマの皇帝で哲学者マルクスアウレリウスも「人は皆すべて、その思いのごときものになる」と言っています。
また、マンチェスター大学の統計調査によれば、人生において成功者と失敗者の分かれ目は非常に単純であり、「成功者は常に成功について考えており、失敗者は常に失敗について考えていたのがその原因である」という分析結果を発表しています。
これは即ち「日常、心下意識に蓄えられた暗示の総量によって、その人の人生は決められていく」ということについて述べたものでしょう。
宇宙の森羅万象が、すべて陰陽の二元対立によって発現しているように、人生における因果の理も、この陰陽二類の力のもとに支配されているのです。
即ち、日常を「陰の思考」と「陰の感情」のうちに過ごす人は、やがて未来において「陰の結果」をもたらし、逆に「陽の思考」と「陽の感情」のうちにある人は「陽の結果」をもたらすのです。
具体的に説明すると、日常、不安・愚痴・不平不満・怒りなどの否定的な思考の中にあると、いかに肉体的な努力をしても、その人の未来は、失敗・病気・不和・災難などを体験するに至り、逆に自信・感謝・喜び・寛容などの肯定的思考のうちにある人は、成功・健康・平和・無事などを体験することになる、ということなのです。
「因」とは日常の暗示のことであり、これが心下に蓄積されて、やがてそれが「果」として現れてくるのであり、これが「因果の法則」と呼ばれるものです。
20世紀初頭、精神分析医のフロイトがこの「潜在意識」に初めて学問的体系を与えました。フロイトの時代には潜在意識は医療を目的とした研究素材でした。しかし、時が経つにつれて、それはただ単に人間の肉体を制御するだけでなく、その人の人生や運命まで支配する、宇宙法則的な神秘の力を持っていることが次第に明らかになってきたのです。
人間が頭で何か考えると、その影響は潜在意識に及ぼされる。次に潜在意識はその人の身体の調子、はては運命にまで影響を与えるのです。従って、その人の幸・不幸は、日常どんな考え方をしているかで決まってくると言えます。
多くの人がこう言うかもしれません。「世の中のほとんどの人は成功を願い成功について考えているはずだ。だのに、成功した人よりも失敗者が多いのはなぜか?」
その答えはこうです。
第一に、それらの人々は一時的に成功という肯定的なことを考えても、他の時にはそれを上回る何倍もの時間をかけて、否定的なことを考えてしまう。そのために、せっかくの肯定的なものが打ち消されてしまうのです。
第二に、成功そのものの姿を明瞭に描けないことです。成功は一人ひとり、目標や内容が違っています。それぞれの願いを具体的に頭の中に思い描けなければなりません。これを目標像の視覚化といいます。この 視覚化を上手にできるかどうかが、その人の運命を決定的に左右するのです。不運に直面している時は、不運な現実は顧みず、ただひたすらに幸運を夢見ればいいのです。
昭和25年、ホンダが社員50人の中小企業の頃、本田宗一郎は社員を集めて自らミカン箱の上に乗って、「世界一になれ。世界一でなければ日本一になれない」とたびたび演説したことは有名です。宗一郎のバカでかい話を真剣に熱っぽく話すのを聞いているうちに次第に「この人はすごい人だな」と引き込まれていったといいます。
このように、幸運を視覚化することによって、自己の運命を良い方向へと向けることができるのです。(参考図書『人蕩し術』無能唱元著)