今月のコラム 文⁄塾長 大山重憲
入魂
6月17日に埼玉会館で開催された埼玉県高等学校PTA連合会定期総会において、会長としての任期を無事に全うし、その任が解かれた。
正直ホッとしている。年間およそ70日は何らかの会合や行事に参加していた。2年前に次期会長の打診があった時は寝耳に水で現実として受け止められなかったが、出身母体の校長先生に説得されて半分以上止む無く、しかし受ける以上は全力で頑張ろうと心に決めて役を受けることになったのだ。
役員の皆様は、それぞれお仕事がおありの中で、また、それぞれの学校の会長としてもお忙しい中で、時間を割いて遠路、県外での会合にも参加して頂いた。本当に大変なことだったと思う。
私も実際、正直、大変なこともあったが、学校だけでなく文科省や県教育委員会、関東高P 連・全国高P 連の会合にも参加させて頂き、通常ではできない経験と勉強をさせて頂いた。その点は大変、感謝している。
そしてPTA活動が、役員皆様の、仕事や家事をさて置き、時間も労力も費やされる多大な御苦労の土台の上に成り立っているのだ、ということがよくわかった。その原動力はとりもなおさず、我が子に対する愛情であり、我が子が頑張っているからこそ親も頑張れる。我が子の通う学校だからこそ良くなって欲しいと願う。そういう親としての熱い思いが原動力になっているということが、よくわかった。本当に頭が下がる思いである。
高校での役職を頂いた期間も含めて4年間、PTA活動に関わって率直に思うことは、歯に衣着せない議論をもっと活発にするべきだ、ということである。
変革には明確なビジョンと綿密な計画、そして果敢な実行力が求められるが、年数回しかない会合の中で何かを変えよう、新しいことをしようとする時、一回毎の会合の重さは改めて言及するまでもない。
以下、本欄を借りて総会での挨拶を一部加筆抜粋して今号のエッセイとさせて頂く。
本県高P 連は昨年50 周年という節目を迎え、記念式典・祝賀会を催し新たな歴史の創造に向けて再出発したところでございます。
50年前の日本は、東京オリンピックが開幕、東海道新幹線が開通し、カラーテレビが普及し始め、カセットテープレコーダーが発売された時代でした。そして今日、国際宇宙ステーションが建設され、IT革命という言葉も、もはや15年前の流行語大賞であり、人工知能が向こう10年以内に、現在の職業の半分を人間にとって代わると言われています。高校生のスマートフォン所持率は2011年から爆発的に上昇し、2014年現在、実に96%に上ります。ラインの利用率も96%に上ります。ICT(情報通信技術)の発達は日進月歩であり、そのスピードは驚異的であります。人間が社会を変え、その社会が人間を変えつつあります。このように高校生のみならず社会全体が劇的に変容していくに伴い、私達PTAは何ができるのでしょうか。何をするべきなのでしょうか。
役員の皆様が学校や活動の現場で生じている課題・問題を放置せず、熱く議論して現状打破しよう、改革しようとし、安穏とした例年通りの踏襲では済まされない現状に直面し、改善に次ぐ改善を実行していらっしゃる。そこには涙ぐましい努力と大変なご苦労がありました。
それぞれ独自の特色ある活動の現場において、改善の余地は随所に見受けられることと思います。伝統行事を踏襲し継承させていくことも、とても大切ですが、それだけが本来の活動ではないはずです。時代錯誤的に陥らないためにも、現状に安住せず、一つ一つの活動の意味と目的を確認しながら、新しい目で見ること、リセットして見直すことの必要性を、私は痛感しています。そして、今、PTA活動の在り方が問われている、変わっていくことが求められている、と思うのです。
防災教育、キャリア教育、急速に普及するスマートフォン・ソーシャルメディア等の安心安全な利用のための啓発活動等、学校・家庭・地域が連携し合っての取り組みの大切さは論を待ちません。政府の平成25年から29年度の第2期教育振興基本計画によれば「今まさに我が国に求められているもの、それは、自立、協働、創造に向けた一人一人の主体的な学びである」と言います。
この課題を達成させるためにも、何よりも、身近な諸問題の解決が大前提であることは、言うまでもありません。そして、「生徒の教育効果の向上と福祉向上」というPTAの目的の成就のために、先生方と私達保護者が同列に立ち、同一方向を向いて、協力し努 力していくことが求められていると思うのです。
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一年前の自分と比べて、今までと違った年輪が一つ、刻まれた。それぞれの場で何回挨拶をしたことか。「スピーチをする時は原稿をつくり、極力覚えてから会に臨む」とはスピーチを文学にしたと評された丸谷才一さんの言である。私は、お恥ずかしい。まだまだ、である。