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今月のコラム 文⁄塾長 大山重憲
2013年9月
引導
「Kさんから長女のJちゃんの受験の件でアドバイスをしてほしいとメールが来たんだけど、どうする?」
突然、家内からメールが来た。Jちゃんは私の次女の小学校からの友人で、母親同士も時々連絡を取り合う仲である。私は挨拶程度しかしたことがない。Jちゃんとは言葉も交わしたことがなく、顔を知ってる程度である。そういう関係なのに、私に直接会ってアドバイスをしてほしいと言ってきたのである。まるで救急患者だ。断る理由もないし、余程のことなんだろうと思い、日曜日の午後に自宅に来てもらうことにした。
「お忙しいところ、申し訳ありません。」と、Jちゃんはすっかり大人びていた。
「では、早速、本題に入りましょうか。」
近況報告はそこそこにして、模擬試験のデータを見せてもらった。学校では、今の成績では第一志望校が難しそうなので、合格できそうな大学を探すようにと言われているとのこと。予備校でもランクを下げた方が安全だと言われているとのこと。本人は第一志望校を諦めたくない、とのことである。
データからすれば確かに今の成績では第一志望校は無理である。しかし、受験教科とその配点、現文・古文の配点、本人の得点、合格最低点を鑑みると、古文が不得意で足を引っ張っていることが分かった。そして、合格最低点まであと何点足らなくて、頑張れば到達できそうかどうか検討したところ、十分にクリアできそうなことが分かった。
「まだ夏だし、十分に力をつける時間はある。古文の参考書・問題集を易しいものから始めて丁寧に5冊はやりなさい。できる?」
「はい、やります。」
「やらなきゃね。このままで手を打たないでいたら何も変わらない。今日からすぐに始めないと。国立大学目指す生徒は5教科やらなきゃならないところ、Jちゃんは3教科でいいし、漢文はやらなくていいんだから、その分、古文に時間をシフトできるよね。」
「はい。」
具体的に何をどうやっていいか、どの教科であと何点取ればいいのか、数値目標を明確にできて、希望が持てたのだろう。真っ直ぐ前を向けるようになったことが、明るい笑顔から見て取れた。聞けば、学校でも予備校でも、今の偏差値だけで志望校を選ぼうとして、ここまでデータを分析しながらの話はなかったとのことである。
面談は、こうしなければばらない。データに基づいて戦略を明確に打ち出すのが面談である。慰め事や励ましだけで十分とは、全く言えないのだ。
面談は、医者の診察に似ている。医者は患者の状況や容体から検査などをして診断を下し、処置したり薬を処方したりする。我々学習指導に携わる者たちも、生徒の学習状況やそれぞれの教科の学力、推移等を把握し、学力を伸ばし、志望校合格に導く。生徒のモティベーションを高揚させたり、勉強の習慣付けをさせたりという、メンタルな部分の指導が大切で難しいところでもあるのが医者と決定的に相違するところである。
塾生たちは記録的な猛暑の中、よく頑張っている。塾生達の熱気も手伝って、エアコンを増設した教室もある。「咽喉元過ぎれば熱さ忘れる」のが人の習いだが、受験という関門に挑むために、とにかく頑張ったという経験は、決して忘れてほしくない。受験生活を受験のためだけの生活だったとして忘れ去ってほしくないのだ。なぜなら受験生活は、極度に自分を鍛錬しあらゆる意味で自分を成長させてくれる、母親の胎内生活にも似ているからである。
頑張れ、受験生。