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今月のコラム 文⁄塾長 大山重憲
2013年8月
変容
K高校の学校説明会。中3の長男と参加してきました。
校長先生によるK高校の特色などに関する話が50分にも及びました。人生をどう生きていくべきか、自分が還暦を迎えて半生を振り返った時、「頑張ってきたな、楽しい人生だったな、社会貢献できたな。」という満足感を得られるように職業を選択しなければばらない。自分は何をやりたいのかを見出すための高校生活であってほしい。と、中学生に向かって校長先生独自の人生論を披露した感がありました。それはまさに立派な「講演会」でした。
それから20分ほど学校紹介のスライド上映。学校行事や部活には力を入れない、ひ弱な「ガリ勉」集団との先入観に支配的されていた私であったが故に、野性的で豪快な運動会や専門性の高い音楽の授業風景、全力投入している部活動などの様子に意外性や親近感を覚え、親の私も憧れさえ抱くようになっていました。
当の長男は、校長先生の講話、スライド、入試説明、すべてに食い入る様に前傾姿勢で耳を傾け、時折笑みを浮かべながら完全に入り込んでいる様子でした。
「どうだった?」会が終わって長男に尋ねました。
「すごく良かった。」
「どんなふうに?」
「K高校が身近に感じるようになった。」
「K高校生になったような気分だろ。」
「うん。」
「でも、最後のK高校生たちの座談会で、K高校がどんなに楽しい学校か、素晴らしい学校か、その魅力に関しては話していたけど、K高校に合格するために、どんなに頑張ったかに関しては全く触れてなかったよな。」
「うん…。」
「あの楽しい充実した高校生活を送れるのは、K高校合格のために頑張って頑張って、難しい入試問題が解けて、合格した者だけに許された特権だ。」
「うん…。」
「天上の夢を、地上の現実としてつかむ。そのための戦いを、これからしていくんだな。」
「うん…。」
「でも、おまえがK高校受験生の中で、誰よりも一番、憧れ憧れどんなに憧れていたとしても、それだけで合格できたら世話ないよ。点数を取らないと。冷酷だけど、それが受験だ。」
「うん…。」
多くを語らない長男でしたが、よくよくわかっている風でした。この説明会は、長男をも私をも確かに変容させました。強烈なインパクトを与えてくれました。先入観や偏見や思い込みを、今もなお抱いている自分の人間としての足らなさを、同時に見せつけられることにもなりました。
高校受験。中学生にとって避けては通れない現実に、御多聞に漏れず、我が長男も立ち向かっています。本人にとっては、それがすべてです。我が家でも受験の話題で沸騰しています。
もちろん、本人が行きたい高校には合格してほしいと思います。しかし、受験生活を通して本人が部分的であっても自分と向き合う。自分の課題解決から避けずに真正面からぶつかって越えていく。その過程で人として逞しく成長していく。それが本質的に尊いことなのだと、私は正直、そう思います。
そして実は、私達親も、その過程で良く変容していく。それがまた、ありがたいことなのです。