「信じます、君の可能性 伝えます、学ぶ心」  フェニックス アカデミー

今月のコラム 文⁄塾長 大山重憲

2013年4月

初志

成功とは何でしょうか? 失敗とは何でしょうか?

自然科学の世界では一つの科学的法則の発見は、仮説を立て、実験し、立証する過程で、予想通りになって成功、ならずに失敗、という言い方も成り立つでしょう。しかし、その失敗から教訓を得て、やがて成功に至る、ということがよくあります。失敗が、やがて成功を導くのです。昨年ノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥教授も、幾多の実験の失敗を重ねた末、やっと成功したことを、明かしています。

私が大学を卒業して海外に留学し、帰国してから3か月間、ヨーロッパを一人で旅しました。その3か月の間に、高熱にうなされたり、置き引きに会ったり、詐欺に会ったり、だまされたり、凶器を突きつけられたり、と、決して安穏でも呑気でも優雅でもない旅でした。旅を始めて一か月経った時、いっそのこと帰国しようかと思い始めた5月中旬のある日のことでした。

世界遺産にも登録されている、中世の街並みが保存されているイタリアのアッシジで、泊まるところがなく野宿することを余儀なくされた夜中、田んぼの畦道を歩いて行くと、まばゆいばかりの光が目に飛び込んできました。一気に昼になった錯覚を覚えました。「夜中のはずが何故?」と、よく見てみると、蛍の大群でした。

そして、次の瞬間、透き通るように澄んだ合唱のハーモニーが聞こえてきました。耳を澄まして聞いてみると、「必ず道がある。見つけ出しなさい。」という言葉でした。それは、啓示の如くに天から聞こえてきたようにも、心の内から湧いてきたようにも感じられました。

しばらくその場に立ちすくんでいました。幾度も幾度もそのハーモニーは耳の中でこだまして、耳から離れませんでした。

「諦めてはいけないんだ。例え一歩踏み込めなくてもいい。じっと耐えているだけでもいい。大雪にみまわれてビバークする登山家のように。動けない。でも、あきらめない。春の来ない冬はない。朝の来ない夜はない。」そんな思いが一瞬のうちに幾重にも幾重にも頭の中を駆け巡りました。

時計を見たら夜中の1時を過ぎていました。3時間ほど、その場に立ちすくんでいたことになります。気づいたら冷気に体全体が包まれて、体の芯まで冷え切っていました。その夜は城壁のくぼみで体を丸めて、朝を迎えました。

それから2か月ほど、私の一人旅は続き、何回か危険な目に遭いながら、しかし、結果的には旅先で出会った人たちに助けられながら、何とか3か月の「冒険の旅」を終えることができました。

「必ず道がある。見つけ出しなさい。」は、この言葉が聞こえてきたその時から、今日に至るまで、私の生き方の基本姿勢になっています。

皆さんの今後の人生で、壁にぶつかってなかなか越えられない時、諦めてしまおうかと思った時、思い出して欲しいのです。私の半生を振り返ってみた時、私には「選択」というものがありませんでした。選択しようにも、一つしかないのですから、それを採るしかなかったのです。ですから、後悔がないのです。

私は、人生には「成功」も「失敗」もないと思うのです。人生に教科書もマニュアルもありません。地図のない航海のようなものです。でも、皆さんの航海の目的地は同じだと思います。それは、「幸せ」であって、何人(なんぴと)によっても侵害されえない、自分自身が実感する尊い世界です。

年度の変わり目を迎え、進学・進級する諸君。志を高く掲げ、貫徹する、たくましい諸君であらんことを期待します。

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