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今月のコラム 文⁄塾長 大山重憲
2013年1月
脱ストレス
免疫力が落ちれば風邪をひく。では、免疫力を高く保つにはどうしたらいいか。まずは精神的ストレスを避けることと、朝起きて夜眠る規則正しい生活を送ることだと言われてきた。それに加え、最近では「ヨーグルト(乳酸菌)を食べること」が効果的だという研究結果も明らかになってきた。免疫学の権威である奥村康・順天堂大学医学部特任教授は次のように述べている。
佐賀県有田町の小中学生約1900人が2011年春までの半年間にわたり1073R-1乳酸菌を使用したヨーグルトを食べ続けたおかげで、期間中の小学生のインフルエンザ感染率は佐賀県(有田町を除く)が4.37%であるのに対して有田町は0.64%、中学生は2.57%に対してわずかに0.31%でした。乳酸菌が免疫力を高めたということです。
免疫には「軍隊」に当たるリンパ球と、「警察」に当たるリンパ球の二つの種類があります。軍隊型のリンパ球は、ウィルス感染に極めて強い抵抗力を発揮しますが、抗原抗体反応を経てから対応するので効果が出るまでに時間がかかります。一方の警察型は、ナチュラルキラー(NK)細胞と呼ばれ、ウィルス感染した細胞や癌化した細胞をいち早く見つけて攻撃します。
私たちの体は毎日一兆個の細胞を新たに生み出していますが、そのうち5000個ほどは不良化、すなわち癌化します。これを成長する前に叩いているのが警察型のNK細胞なのです。NK細胞は常に血液中をパトロールしていると考えればいいでしょう。リンパ球のうち2〜3割を占めているだけですが、人間の免疫力を支えるたいへん大切な存在です。
ただし、NK細胞はいくつかのきっかけで活力を失うことがあります。加齢と生活リズムの乱れと精神的ストレスです。65歳くらいを過ぎるとこの「おまわりさん(NK細胞)」は居眠りをするので、その間にたとえば癌化した細胞が増殖してしまい、目覚めた時には警察では手に負えないくらいの大きさに育ってしまう。加齢と共に癌の発症が増えるというのはこの理由によります。
また、NK細胞は朝になると活性化し、夜には働きが弱まります。夜遅くまで仕事をしていたり、お酒を飲んだりしていると、高齢者でなくても免疫力が低下します。
そしてストレスが加わると、高校生くらいの若者でもインフルエンザや風邪にかかりやすくなります。入試や定期試験の前になると風邪をひきやすくなると感じたことはありませんか?それは、試験のストレスにより、NK細胞の活性化が低下するからです。
したがって、規則正しい生活をし、ストレスがかからないように心がければ免疫力を高く保つことができます。それに加えて、従来から乳酸菌などを摂取することがNK細胞の活性化には有効だということが知られていました。今回の調査では、そのことが統計的にも裏付けられたということです。
ストレスは伝播します。仔を産んだばかりの動物から仔を取り上げると、免疫力が下がることが知られていますが、健康な動物の群れに仔を失った個体を一頭交ぜると、他の個体の免疫力も低下します。人間にも同様のメカニズムが働くと考えられ、例えば暗い人生観を持つ人と付き合えば自分の心まで暗くなり、免疫力が衰えます。風邪をひきやすくなりますし、癌も発症しやすくなります。ですから、付き合う相手を考えなくてはいけないというのは、本当なのです。
ところで、では、どうやってNK細胞を活性化させるのか。一番いいのは笑うことです。おかしくなくても、一日一回ワハハと笑う。そうして頭の中を「白く」する。言葉を換えれば頭の中の切り替えをすることです。そうやって定期的にストレスを解放することが大事なのです。
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受験生諸君、少しでもストレスを軽減するために規則正しい生活を心がけ、ヨーグルトを一日一回は食べ、ワハハと笑って過ごしましょう。健闘を祈ります。