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今月のコラム バックナンバー 文⁄塾長 大山重憲
2012年4月
一言
「はじめまして」
この一秒ほどの短い言葉に、一生のときめきを感じることがある。
「ありがとう」
この一秒ほどの言葉に、人の優しさを知ることがある。
「がんばって」
この一秒ほどの言葉で、勇気がよみがえってくることがある。
「おめでとう」
この一秒ほどの言葉で、幸せにあふれることがある。
「ごめんなさい」
この一秒ほどの言葉に、人の弱さを見ることがある。
「さようなら」
この一秒ほどの言葉が、一生の別れになる時がある。
一秒に喜び、一秒に泣く。
一生懸命、一秒。
*
被災地石巻市に一枚の看板があります。「がんばろう!石巻」。地元で配管工事を営んでいた黒澤健一さんが書いた看板です。
何気ない言葉のこの看板は、震災後の4月11日に掲げられました。以来、看板を見て涙を流す人、手を合わせ拝む人、「一緒に頑張ろう」と声をかけてくれる人、地元の被災した人たちがこの看板に集っては勇気と力を与えられ、夜はライトアップされるようになり、今もなお、地元の人たちを励まし続け、復興のシンボルにまでなっている看板です。フランスのフィヨン首相や歌手の長渕剛さんら著名人も訪れました。
私たちが日頃何気に使っている一言の言葉が、思いの外(ほか)、人を力づけたり傷つけたりするものです。特別に準備された飾った言葉より、日常のありふれた言葉が心に沁みて、人を動かしたりするものです。『大きなことでなくていい。いつものありふれた愛でいい。』南三陸町で目に留まった被災した人の言葉が蘇ってきました。
先日、某高校の卒業式に参席しました。校長先生の式辞、来賓の式辞、卒業生の答辞、在校生の送辞、すべてに、これまで味わったことのない感動を覚えました。何がそんなにまでも感動を与えてくれたのかと言えば、それぞれの言葉に、読み上げる人の心が込められていたからだと思います。美辞麗句に染められた言葉でなく、日常的で平易な言葉で語られた一言一言に気持ちが込められ、聞く者の心を動かしたのだと思います。率直に思いを語るということ。自分の考えを理解してもらうために相手を説得するということ。相手に自分をわかってもらうために訴えるということ。これらのことは、自分が「思い」に満ちていないとできないことだと思います。その思いに触れることができた時、人は、感動するのではないかと思いました。
*
さて、寒さも次第に和らいで、いよいよ春の訪れを感じる頃になりました。皆さん、卒業、進学、進級、おめでとうございます。新たなスタートラインに立って、皆が一斉にもう一度、スタートする時です。勢いに乗って更に前進することもあるでしょう。仕切り直しをすることもあるでしょう。自分をよく見つめて、新しい学年を、がんばって過ごして欲しいと思います。そして一年後、成長した皆さんの姿を見ることが楽しみです。がんばってください。