「信じます、君の可能性 伝えます、学ぶ心」  フェニックス アカデミー

今月のコラム バックナンバー 文⁄塾長 大山重憲

2012年1月

無心

年の瀬を迎える時候となりました。皆さんにとって2011年はどんな年だったでしょうか。

震災の年、2011年。日本漢字能力検定協会(漢検)が選んだ今年の漢字は「絆」です。震災の凄惨さとは裏腹に、ほっとさせてくれる温もりのある言葉が選ばれて、思わずため息をついてしましました。

マザーテレサがインドのスラム街に渡った当初、インドのすべての貧しい人を救おうと、社会を改革しようと、インド社会全体を見ていた時は誰からも理解されずに「外国人が何をしてるんだ」と冷ややかな目で見られていました。しかしその後「目の前にいる一人の人のために行動しよう」としてから、気がついてみたらハンセン氏病の患者を抱きしめていた、といいます。それから次第に理解されていき、協力者も現れ、必要な時に必要なことが起こった、ともいいます。「社会のために」なんてやっていると、ちゃんと一人の人を見てない。目の前の人のために一生懸命になる。「どうしてこうして」と考えるより、まず、行動する。マザーテレサの手法、というより、生き方なのだと思います。

6回の被災地訪問を通して、私自身、決定的に変えさせてもらったことがあります。それまでの自分は、一つの現象に対して、その意味を考えたり、一つの行動を起こすにもその意味や目的を考えたりしていました。しかし、その後は、あれこれ考えるより先に、目の前の事象に、考えるより先に、一生懸命に取り組むようになりました。

すべてを失って、「自分という存在」しか残らなかった人たちもいます。でも、そういう人たちであっても、梶原裕太君の言葉通り、「天を恨まず、運命に耐え、助け合って生きている」人たちが、この狭い日本の中に、今もなお、いる、という事実が、自分にとっては生きる意味を考えさせられる前に、目の前のことに一生懸命になりなさいと叫ばれているようでなりません。

昨日(15日)、南三陸町で40年間営んでいたラーメン屋「たけや」が再開しました。11月に出会ったマスターは、防潮堤のすぐ後ろにあって、津波で流されたお店の跡を見に来たんだと言って海の方を指差していましたが、南三陸町で再開第一号のお店とあって、「復興ラーメン」にかける意気込みを熱く語ってくれていました。避難所ではずーっと炊き出しをやっていて、とにかく忙しかったこと。悲しんでいる暇などなかったこと。店の再開をみんな楽しみに待ってくれていること…。

話を聞いていて、また、マザーテレサの言葉が浮かびました。「人間は自分が誰からも必要とされていないと感じた時、大きな絶望に陥る。」「目の前の一人の人のために誰かがやらなかったら、誰もやらないのよ。一人の人のために働いていると、一人の人は社会に通じていき、一人の人は世界に通じていく。」

皆、一生懸命です。とにかく生き抜いていくことに一生懸命です。いつも逆に励まされてばかりの自分で恥ずかしい限りですが、自分も力をもらって以前より一生懸命になれたように感じます。自分の存在価値や存在意味も、一生懸命行動することで見えてくるもののようにも思うのです。

2012年、皆様にとって良い年でありますよう、お祈り申し上げます。

今月のコラムへ戻る バックナンバー一覧へ戻る TOPへ戻る