「信じます、君の可能性 伝えます、学ぶ心」  フェニックス アカデミー

今月のコラム バックナンバー 文⁄塾長 大山重憲

2010年11月

王監督率いる日本代表が2006年のWBCで優勝した際、王監督とイチローの交わした会話がとても印象的です。

 「現役時代、選手の時に、自分のためにプレーしていましたか、それともチームのためにプレーしていましたか。」

「オレは自分のためだよ。だって、自分のためにやるからこそ、それがチームのためになるんであって、チームのために、なんてヤツは言い訳するからね。オレは監督としても、自分のためにやっている人が結果的にはチームのためになると思うね。自分のためにやる人がね、一番、自分に厳しいですよ。何々のためにとか言う人は、うまくいかないときの言い訳が生まれてきちゃうものだからな。」

イチローは小さな声で「ありがとうございます」と言って、頭を下げた。

「よくぞ、という気持ちでしたね。そこの価値観は、僕も王さんもブレてない。共有してるっていう強みを感じたから、ありがとうございますって言ったんです。このオフ、いろんな人に会いましたけど、トップの人はみんな口を揃えて言いましたよ、『自分のためにやっている』って。誰一人としていませんでしたね、まずはチームだって言った人は…ゼロ、ゼロです。みんな、それがいずれはいろんなところにいい影響を及ぼすってことを知っている。それが僕にはすごく心強かったですね。特に、王さんの言葉はね。だって、“世界の王”がそう言ったなら、堂々と言えますから。アメリカの選手にもこう言ったよって。」

「打てなくても勝てばいいというのは、極端に言えば自分がいなくてもチームが優勝すればいいということでしょう。ずっとベンチにいても優勝できればいいなんて選手、いるわけがない。だってそれじゃ、クビを切られますから。それでもいいなんて言えるはずはないですよね。」

「僕は自分がメジャーでやりたくてアメリカに行っただけですから、結果的にどうなろうとも自分のためにやっただけなんです。後から『日本球界のためになった』とか、『先駆者』だとか、そうやっていい意味に捉えられても戸惑います。僕が先駆者だなんて,ちゃんちゃらおかしいですよ。」(『イチロー・インタヴューズ』石田雄太著より)

一途に生きる人の言葉には重みも説得力もあるものですが、「天才」と言われることを極端に嫌うイチローの陰の努力が、前人未到の大記録を生み出していることは、「あの人は才能があるから…」という諦念的な妥協の卑怯さを、私たちに教えてくれているようです。

今月のコラムへ戻る バックナンバー一覧へ戻る TOPへ戻る